過去問はこうやって本試験への知識に変える～労働基準法⑪～

「本件就業規則条項は、同規則55条の規定に徴すれば、停年に達したことによつて自動的に退職するいわゆる『停年退職』制を定めたものではなく、停年に達したことを理由として解雇するいわゆる『停年解雇』制を定めたものと解すべきであり、同条項に基づく解雇は、労働基準法20条所定の解雇の制限に服すべきものである。」

でしたね。

これを記憶しやすい情報に加工して京大式カードに書くなり、ＩＣレコーダーに録音してクイズ化し、何回か繰り返せば、簡単に覚えられますね。

スマホアプリの「分散学習帳」がもっと使いやすいでしょう。

情報を覚えやすく加工する過程で脳みそに汗をかき、覚えやすくしたものを何回も繰り返し思い出すことで長期記憶に変えることが一番の忘却対策です。

分かりやすい講義や資料を１回聴いたり、眺めたりしただけで問題が解けるなんて魔法じみた方法はありません。

筋トレと一緒です。

脳みそに汗をかいた分、あなたが本試験で使える知識になります。

今日の過去問検討

今日のテーマと本試験に持っていく知識の個数

では、過去問検討に移りましょう。

今日は、「労働契約」の「退職時等の証明等・金品の返還」から、

「退職時等の証明・ブラックリストの禁止」（労基法２２条）と、

「金品の返還」（労基法２３条）を整理します。

僕が持っている過去問集と、今年の問題からは、

「退職時等の証明・ブラックリストの禁止」が７肢（類題含めて９肢）、

「金品の返還」が３肢、載っています。

ただ、僕の検討では、問題の数だけ知識が必要なのではなくて、

「退職時等の証明・ブラックリストの禁止」は「４個」の知識、

「金品の返還」は「３個」の知識（ただし１つは細かい知識）でパーフェクトだとまとめました。

その中でみなさんは、お持ちの過去問集から、

本試験に持っていく知識はどのように準備していますか？

では、そのうちの１つを見てみましょう。

今日の１問

「使用者は、労働者の死亡又は退職の場合において、権利者の請求があった場合においては、７日以内に賃金を支払い、労働者の権利に属する金品を返還しなければならないが、この賃金又は金品に関して争いがある場合においては、使用者は、異議のない部分を、７日以内に支払い、又は返還しなければならない。」

（令和２年度問５オ）

この問題、問われている知識は何でしょう？

では、シンキングタイム、スタート！

このブログでは、５Ｗ１Ｈの疑問形になるように考えることを推奨しています。

………、

「労基法第23条には、どんなことが定められているか？」

ですね。

では、答えは？

………、

本試験に持っていく論点知識

「①使用者は、労働者の死亡又は退職の場合において、権利者の請求があつた場合においては、７日以内に賃金を支払い、積立金、保証金、貯蓄金その他名称の如何を問わず、労働者の権利に属する金品を返還しなければならない。

　②①の賃金又は金品に関して争がある場合においては、使用者は、異議のない部分を、同項の期間中に支払い、又は返還しなければならない。」

ですね。

整理の視点

今日のも読めば分かりますねって言うか、条文まんまです。

令和になってからの労基法の出題で、条文まんま何て書かれているか知ってますか？タイプのものは珍しいですね。

当時、受験された方は逆に面食らったのでは？

では細かく見ていきましょう。

①の主語が使用者なのは特に問題はないでしょう。残りの４つ部分が個数管理して記憶すべきところです。

１つ目は「労働者の死亡又は退職の場合において、」であること。

要は、雇用契約が終了した時にはってことですね。退職はもちろんのこと、死亡によっても雇用契約は終了しますからね。

「死亡」がしれっと選択式で抜かれたとしても慌てずに対応できますか？

２つ目は「権利者の請求があつた場合においては、」であること。

ここでの「権利者」って、どんな人が該当するんでしたっけ？という過去問が別にありましたよね。

そこで出てくる労基則第42～43条ってのが何かの確認は済んでいますか？

条文番号が出てきたときに、素の条文の中身を確認するのは必須です。

これをしておくことで、再出題されたときにその中身がズバリ出てきても「何じゃこりゃ？」ではなく「あー、はい、アレね。」と華麗に対応できますよ。

なお、「権利者」の文言からすると、死亡又は退職した労働者の一般債権者（例えばお金を貸している人）も含みそうなものですが、通達上は否定されています。理由は、本条の趣旨が、労働者本人及びその近親者に労働者の財産を滞りなく返還するためだからでしょうね。

最近の傾向からすると、こういう感じの問題をしれっと出してきて、現場での思考力を試してきますよね。

ポイントの３つ目は「７日以内に賃金を支払い、」であること。

労基法で「７日以内に」というのはここだけです。

では、他の箇所で「〇〇日以内に」金銭を支払えとなっている箇所って、どんなのがありましたっけ？

はい、思い出して！　テキストは見ない(ー_ー)!!

………、

「①明示された労働条件が事実と相違する場合に、労働者が即時に労働契約を解除した場合の帰省旅費：14日以内に（第15条第３項）

　②満18歳に満たない者が解雇されて帰省する場合の帰省旅費：14日以内に（第64条）」

でしたね。ほほー、帰省旅費の２つか。

他にも「〇〇日以内」という表現はありますが、金品に関するのは、今日のを入れてこの３つです。当然、相互に紐づけして記憶していますよね。

ポイントの４つ目は「積立金、保証金、貯蓄金その他名称の如何を問わず、労働者の権利に属する金品を返還しなければならない。」であること。

いろんな名称のものが出てきますが、「その他」でつながっていますから、積立金、保証金、貯蓄金、名称の如何を問わずー労働者の権利に属する金品というのは並列の関係ですね。

要は、労働者に帰属する金品はそっくり返せということ。

そりゃ当たり前かもしれませんが、使用者が何かと難癖をつけて労働者の財産を侵害しないようにという趣旨なのでしょう。

もちろん、これらの返還も「７日以内に」です。

②のポイントは２つ。

１つ目は「①の賃金又は金品に関して争がある場合においては、」であること。

要は権利者と使用者の間で「☆☆は俺のモンだ。」といさかいが起きている場合にはってことですね。

２つ目は「使用者は、異議のない部分を、同項の期間中に支払い、又は返還しなければならない。」であること。

つまり、争いがあるといっても、全部を返さなくていいのではなく、問題ない部分については、７日以内に渡せということですね。

マイナー論点の割に、意外と整理すべき項目がありましたが、ロジック的にややこしいところはありませんでしたから、「条文には何て書いてあって、そこで言わんとしていることは△△ってのが〇個あって、それぞれこういうこと。」みたいにまとめて、記憶しておけばなんてことはありませんね。

社労士試験で記憶すべきことって、ほとんどがこうやって階層的に整理できて記憶できますんで（というか、記憶するということ自体が情報の階層化という脳作業そのものである。）、それを過去問出題歴のあるものをベースにやり切ったかどうかが合否の分かれ目です。

このブログを活用しているあなたなら、毎日コツコツ、情報の整理と加工、記憶することを積み重ねていますよね(^_-)-☆

今日のまとめ

今日は、「金品の返還」を整理しました。

また、社労士試験の勉強とは、問題を解くのに必要な情報を整理・加工・記憶することだということについてもお伝えしました。

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